
銅の卵焼き器には油膜が不可欠です。
油膜が剥がれている卵焼き器の場合、「油切れ」「前回の調理時の洗い残し」「温度ムラ(熱ムラ)」「卵液中の異物(カラザや砂糖の溶け残りなど)」のちょっとしたきっかけにより卵が金属面に張り付いてしまうようになります。
卵焼き器をくっつかなくするためには油ならしをやり直します。
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油ならしのやり直しとは?
銅の卵焼き器は油ならしによりくっつかなくなります。
油ならしとは金属面に油が酸化重合することによる樹脂層(ポリマー層)を形成させることであり、鉄フライパンやスキレットにおけるシーズニングと同じです。しかし、銅の卵焼き器の場合には内側に塗られている錫を傷めないように作業する必要があります。
錫の融点は約230℃ですので熱しすぎには注意が必要です。
アルカリ性洗剤を使ってていねいに洗います。
step.1
火にかけて薄煙が出るまで熱します。
step.2
熱いうちに油(乾性油)を薄く塗ります。
step.3
STEP2と3を1日1回3日間ほど繰り返します。
step.4
油はハイリノールタイプのヒマワリ油をおすすめします。
サラダ油(なたね油など)でもできなくはありませんがなたね油はヨウ素価94~126の不乾性油から半乾性油に分類される油ですので、乾性油のように完全に固まる(乾く)ことはなく湿っていてべたつくような油膜になります。
保管時にほこりが付きやすくなることからも、ヒマワリ油やグレープシード油などの乾性油をおすすめします。
鉄フライパンは油膜によりくっつきにくくなります。
ヒマワリ油をおすすめしている理由は?
ヨウ素価の高すぎない乾性油をおすすめしています。
油は二重結合が多いほどに酸化反応が進みやすくなります。たとえばヤシ油(ココナッツ油)は二重結合の少ない油(ヨウ素価7~11)であるために加熱を繰り返しても酸化をしにくい油といえますがアマニ油は二重結合の多い油(ヨウ素価170~204)であるために加熱をしてはいけない油であるといえます。
調理道具の油膜は油を酸化重合させることにより形成されますので、酸化しやすく乾く油(ヨウ素価の高い油)というのは都合が良いのです。
乾性油 ヨウ素価130以上 | アマニ油、クルミ油、ヒマワリ油など |
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半乾性油 ヨウ素価130から100程度 | コーン油、ゴマ油、大豆油など |
不乾性油 ヨウ素価100以下 | オリーブ油、椿油、菜種油など |
しかし、ヨウ素価が高ければよいというわけでもありません。
ヨウ素価の高すぎる油(アマニ油やエゴマ油など)は油膜の仕上がりこそはきれいになるのですが衝撃に弱い傾向があり、一度ひびが入ってしまうとポロポロと剥がれ落ちるように油膜がダメになってしまうことがあります。
これらのことからも、ある程度の柔軟性のあるハイリノールタイプのヒマワリ油やグレープシード油などをおすすめしています。
汚れを焼き切らない理由は?
鉄フライパンは汚れを焼き切ることがあります。
汚れを焼き切る(炭化させる)ことにより落としやすくなるためです。しかし、銅の卵焼き器には錫引き加工が施されていますので鉄フライパンやスキレットのように高温に熱したりやすりでこすることはおすすめしません。
錫は融点が低く柔らかい金属です。
汚れが焼き切れるほどに加熱したり目の粗いやすりでこすったりすれば錫引き加工が荒れてしまいますので洗剤を使って錫を傷つけずに汚れを落とすことがポイントになります。物理的アプローチではなく化学的アプローチで汚れを落とすということです。
ちなみに錫引き加工時にはフラックスが塗られます。
銅に錫を塗ろうとすると錫は表面張力により球体となり銅の表面を転がるようになるために薄く広がりません。そこで予め銅の表面にフラックス塗布しておくことにより溶けた錫が丸くなろうとする働きを抑えることができます。
このフラックスがあることにより汚れが焼き切れるほど熱しても錫が簡単に剥がれてしまうようなこともなくなりますが、ダメージになることは確実ですので基本的には熱しすぎない(230℃以上にしない)ことをおすすめします。
【まとめ】銅の卵焼き器がくっつくようになった?
銅の卵焼き器は油膜によりくっつくのを防いでいます。油膜とは油を酸化重合させることにより形成される樹脂層(ポリマー層)のことであり、酸化により固まる(乾く)性質のある乾性油を用いることで強固な樹脂層を形成することができます。突然くっつくようになったということは油膜が剥がれた(もしくは薄くなった)ということですので、再度油ならしをすることによりくっつきにくい卵焼き器に戻すことができます。