
鉄フライパンにはシーズニング(慣らし)をします。
シーズニングとは鉄フライパンに油をなじませること(油膜を作ること)であり、油ならしとも呼ばれています。油膜の形成には油を酸化重合させることになりますので、油の種類によっては異なる性質を持つ油膜になります。
このブログではハイリノールタイプのヒマワリ油(ヨウ素価120~141)かグレープシード油(ヨウ素価128~150)をおすすめしています。
スポンサーリンク
油膜に適した油の選び方は?

油膜は油の種類により性質が変化します。
油膜は油を酸化重合させることで形成されますが、油には酸化しやすいものとしにくいものがあります。二重結合の多い油には酸化しやすいという特徴がありますので、シーズニングには二重結合の多い(ヨウ素価の高い)油が選ばれます。
以下は主な油の分類です。
乾性油 ヨウ素価130以上 | アマニ油、クルミ油、ヒマワリ油など |
---|---|
半乾性油 ヨウ素価130から100程度 | コーン油、ゴマ油、大豆油など |
不乾性油 ヨウ素価100以下 | オリーブ油、椿油、菜種油など |
ヨウ素価の高い油は乾きます。
そのため鉄フライパンに乾性油を使ってシーズニングをすると透明な塗料を塗ったようにつやのあるきれいな油膜が形成されます。しかし油膜の状態には好みがありますのであえて半乾性油を使って油膜を作る場合もあります。
これはヨウ素価の高すぎる油は割れて剥がれてしまうことがあるためです。
このことからもこのブログではヨウ素価の高すぎるアマニ油(170~204)やエゴマ油(192~208)ではなく、同じ不乾性油であってもヨウ素価の高すぎないハイリノールタイプのヒマワリ油(120~141)やグレープシード油(128~150)をおすすめしています。
ちなみに、なぜか人気のあるオリーブ油(75~94)は不乾性油ですのでおすすめしません。(※アマニ油とエゴマ油はJAS規格にない種類の油であるためにおおよその値になっています。)
鉄フライパンは油膜によりくっつきにくくなります。
シーズニングの方法は?
シーズニングにはいくつかのやり方があります。
たとえば海外では「よく乾かした鉄フライパンに薄く油を塗り、260℃にセットしたオーブンで60~90分焼いてからそのまま冷ます」という方法が取られますが日本の台所では大きなオーブンが一般的ではないために他の方法が選ばれます。
いずれにしても、油の酸化重合には「熱してから冷やす」ことがポイントになっています。(※さび止めコーティングの除去や酸化被膜の形成などは事前に済ませておきます。)
200~250℃まで熱します。非接触型の温度計がなければガスコンロの安全センサー(SIセンサー)が反応するまで熱してもOKですが熱ムラには注意してください。これによって金属表面の吸着水がなくなりますので油なじみが良くなります。
step.1
底全体に広がる程度の油(高さ数ミリほどになる油)を注いでフライパン全体になじませます。200℃ほどまで熱してから火を消します。余分な油を別容器に移し、晒やキッチンペーパーなどを使って全体に薄く塗り広げます。そのまま翌日以降まで放置します。
step.2
①と②の工程を3回ほど繰り返します。油を塗った部分が茶色く変色するのは温度が高すぎるためです。鉄フライパンは頻繁にから焼きをしますが、熱しすぎると汚らしくなってしまいますので注意してください。
step.3
このブログでは上記の方法をおすすめしています。
しかし絶対的な正解はありませんので「オーブンを使う方法」「多めの油を熱してそのまま冷やす方法」「熱しながら何度も油をすり込んでいく方法」など、台所環境に応じてやりやすい方法で問題はありません。
鉄フライパンは何度でもリセットできますので試してみることをおすすめします。

吸着水とは結合力の強い水分です。鉄の表面には物理吸着した水分と化学吸着した水分があります。前者は結合が弱いためにすぐに乾きますが、後者は結合力が強いために200~250℃まで熱しなければ乾きません。
鉄フライパンにつく茶色の汚れは劣化した油です。 熱したフライパンに油を塗り込むタイプのシーズニング方法(油ならし)では、しばしば茶色い汚れが付着します。これは油が均一に延ばされずに加熱されてしまった結果であり広義では油な …
油ならしはいつまでやるのか?

油ならしに期間はありません。
油ならしは繰り返すほどに油膜が厚くなっていきます。そのため新しい鉄フライパンには3回ほど行うのが一般的な回数になっています。しかし油膜の質によっては厚くしすぎると割れてしまうこともありますので明確な答えはありません。
割れた場合にはリセットしてからやり直します。
まずは2~3回ほど油膜を作り、使いにくければ繰り返すことをおすすめします。このブログではヒマワリ油(またはグレープシード油)を使った油膜の形成をおすすめしていますが、乾いた油膜が好みでなければ半乾性油を使うこともあります。
事実、シーズニング済みのスキレットには大豆油が使われていることもあります。
油ならしと油返しの違いは?

鉄フライパンには油ならしと油返しがあります。
油ならしとはシーズニング(油膜の形成)のことであり、油返しとは温めたフライパンに多めの油を入れてフライパン全体の温度を一定にする(温度ムラをなくす)ことです。これにより真ん中だけがくっつくようなことがなくなります。
しかし、あやふやな面もあります。
油返しは熱ムラをなくすためのテクニックですが、熱した油をそのまま冷ましてから再度加熱することにより(一時的にではありますが)普段以上にくっつきにくいフライパンにすることができます。くっつきやすい餃子などを焼く場合には使えるテクニックです。
この場合、油ならしの効果のある油返しであるといえます。
鉄フライパンは油返しにより熱ムラをなくします。
【まとめ】鉄フライパンのシーズニング方法は?
シーズニングとは鉄フライパンの金属面に酸化重合した油による樹脂層(ポリマー層)を形成させることです。樹脂層があることにより油切れを起こしても食材と金属面が直接触れなくなり、食材がくっつきにくくなります。シーズニングにはいくつかの方法がありますが、油の酸化重合には「熱してから冷ます」ことがポイントになりますので、熱したフライパンに乾性油を薄く塗ってそのまま数日放置するのを数回繰り返しただけでもきれいな油膜を作ることができます。