
ぬか漬けには食中毒のリスクがあります。
正しい手入れをされているぬか床は半永久的に使い続けることができます。しかしぬか床に生育している微生物(乳酸菌や酵母など)のバランスが崩れてしまうと、ぬか床を腐らせる雑菌(グラム陰性菌など)の温床になってしまうリスクもあります。
このことからも食中毒の原因菌を増やさないように管理していく必要があります。
スポンサーリンク
ぬか漬けによる食中毒とは?

ぬか漬けによる食中毒にはいくつかの種類があります。
たとえば魚介類を触った手でぬか床の手入れをすれば腸炎ビブリオのリスクがありますし、卵を触った手にはサルモネラ属菌、手荒れをしている場合には黄色ブドウ球菌、広く存在しているリステリア菌など、挙げていけばきりがありません。
ぬか床の手入れには清潔を心がけることがポイントになります。
食中毒菌 | 症状 |
---|---|
腸炎ビブリオ菌 | 上腹部の激しい痛み、下痢、発熱など |
サルモネラ菌 | 悪心、嘔吐、腹痛、下痢、発熱など |
黄色ブドウ球菌 | 嘔吐、腹痛、下痢など |
リステリア菌 | 倦怠感、発熱を伴うインフルエンザ様症状 |
ノロウイルス | 吐き気、嘔吐、下痢、腹痛など |
特に注意して欲しいのが手荒れです。
肉や魚を触った手でぬか床の手入れをする方はおられないはずです。しかし手荒れは見逃されやすい汚染ルートになりますので、日常的に手荒れに悩まされている方や手に傷のある方は「手袋をしてぬか床の手入れをする」ことが大切です。
衛生管理を徹底することによりぬか床の状態も良くなります。
ぬか床が腐らない理由は?

ぬか床は食塩と酸性pHにより守られています。
ぬか床は6~8%前後の塩分濃度とpH4.5前後の水素イオン指数により腐敗菌(バチルス属、シュードモナス属、ミクロコッカス属など)の生育を抑制して、発酵菌(乳酸菌や酵母など)が優位になる生育環境を作り出しています。
このことからも塩分とpHには注意を払う必要があります。
塩分濃度 6~8%前後 | 耐塩性を持たない微生物を退ける |
---|---|
水素イオン指数 pH4.5前後 | 酸に弱い微生物を退ける |
これらが維持されていればぬか床は腐りません。
また、漬物が原因食品として特定された食中毒の多くは一夜漬けなどの塩分濃度が低く酸味のない漬物となっています。たとえば前項にて触れた腸炎ビブリオ菌は好塩性で2~5%の食塩存在下でよく増殖しますが、ぬか床の酸性pHが維持されていれば死滅してしまいます。
食中毒を防ぐためには塩分濃度と酸性pHが大切です。
捨て漬け野菜を食べてはいけない理由

捨て漬け野菜を食べてはいけません。
もちろん(味を良くするなどの理由から)熟成しているぬか床に漬けたものであれば問題はありませんが、始めたばかりのぬか床に熟成を促すために漬けた野菜には多くの雑菌(バチルス属、シュードモナス属、ミクロコッカス属など)が付いています。
食中毒を防ぐためにも1~2週間ほどは我慢してください。
ぬか床をはじめると、はじめは乳酸球菌や雑菌が生育します。雑菌は乳酸球菌の産生する乳酸により死滅していきます。さらに乳酸が増えてpHが下がることにより乳酸球菌もゆっくりと死滅していき、最後には強い乳酸耐性を持つ乳酸桿菌が増えていきます。
この段階になると食中毒のリスクは限りなくゼロに近くなります。
ぬか床は捨て漬けにより美味しくなります。 捨て漬けとは「食べるための野菜とは別に、新鮮な野菜(一般的にはキャベツの外葉や大根の皮など)を漬けること」です。これにより「ぬか床の発酵が促される」「微生物の多様性によりぬか漬け …
【まとめ】ぬか漬けで食中毒?
ぬか漬けにも(確率は低いながら)食中毒のリスクがあります。特に塩分濃度を低くしているぬか床や酸味の少ないぬか床(pHの高いぬか床)は腐敗や食中毒のリスクが高くなりますので注意が必要です。ぬか床による食中毒を防ぐためには「衛生管理を徹底すること」と「塩分濃度と酸性pHを維持すること」がポイントになります。