
食材がくっつくのにはいくつかの原因があります。
主なものとしては「使い方に問題がある」「油膜の形成が不十分」「鉄フライパンの選び方(主に厚さ)に問題がある」などが考えられます。鉄フライパンはフッ素樹脂加工のフライパンとは異なる使い方をしますし、油膜の形成が不十分であれば食材と金属面が直接触れてしまうためにくっつきやすくなります。
また、食材の温度や鉄フライパンの厚さ(熱容量)も影響します。
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鉄フライパンの使い方とは?

鉄フライパンの使い方には理屈があります。
鉄フライパンは「から焼きをしてから油を引く」「温度のムラができる場合には油返しをする」「表面が焼き固まるまでは動かさない」などのポイントがあります。フッ素樹脂加工のフライパンに慣れていると驚くはずです。
また、油の使用量は食材により変化します。
たとえば動物性たんぱく質の食材(肉や魚など)は付着力が高いために多く必要ですが、卵は付着力が弱いために少なくて済みます。ケーキや芋のようなでんぷん質の食品の場合には金属面を油で拭く程度にとどめます。
ちなみに油慣れしていない鉄フライパンの場合には1.5倍ほどの油を必要とします。
鉄フライパンの使い方はノンスティックフライパンとは違います。
鉄フライパンの油膜の形成とは?

鉄フライパンは油膜により食材の凝着を防ぎます。
フライパンに食材がくっつくのは食材と金属面が密着した状態で水分が蒸発するためです。そのために油をひいて油膜を作ることにより食材と金属面を直接密着させないようにして調理されることになります。
特に注意してほしいのが動物性のたんぱく質です。
肉や魚(動物性たんぱく質)を鉄フライパンで焼くと筋形質たんぱく質の球状たんぱく質が熱凝固する過程で一時的に活性基を露出させます。活性基が露出しているタイミングで金属面に触れていると金属と結びついてしまうために張り付いてしまいます。
凝固な油膜が形成されていれば金属への付着を防ぐことができます。
鉄フライパンは油膜によりくっつきにくくなります。
鉄フライパンの選び方とは?

鉄フライパンの選び方は厚さ(重さ)がポイントになります。
食材の焦げつきやすさには鍋材質の熱伝導率と厚さが深くかかわっています。基本的に熱伝導率が高いほど、鍋底が厚いほどに焦げつきにくくなります。誤解されている方も多いかと思いますが、鉄の熱伝導率はお世辞にも良くありません。
以下の表は熱伝導率の比較です。
物質名 | 熱伝導率 W/(m・K) |
---|---|
銅 | 398.0 |
アルミニウム | 237.0 |
鉄 | 80.3 |
ステンレス SUS405 | 27.0 |
ステンレスが焦げつきやすいのは熱伝導率が低いためです。
これらのことからも肉や魚を焼くための鉄フライパンは「厚みのあるもの(重いもの)」を選ぶことがポイントになります。鉄の熱伝導率の悪さをカバーするためには熱容量(比熱×質量)を高くするのが効果的であるためです。
また肉や魚を焼くことが多く手間を惜しまないのであればスキレットも選択肢に入ります。
鉄フライパンとスキレットの違いは熱容量にあります。
食材を常温に戻す理由は?

食材を常温に戻しておきます。
冷蔵庫から出したばかりの食材は5℃前後に冷えています。薄い食材であれば大きな問題にはなりにくいのですが、厚みのある食材の場合には鉄フライパンの熱を奪ってしまうためにくっつきやすくなります。
当然、生焼けやうま味の流出にもつながりやすくなります。
たとえば冷蔵庫から出したばかりの卵で目玉焼きを作ると、卵黄の部分が大きく熱を奪うためにくっつきやすくなります。厚板の鉄フライパンであれば熱容量が大きなためにくっつきにくくなりますが、薄板の鉄フライパンでは高い確率でくっつきます。
また、家庭用ガステーブルは安全センサー(Siセンサー)の部分が温まりにくいためにより一層の注意が必要です。
鉄フライパンは油返しにより熱ムラをなくします。
【まとめ】鉄フライパンがくっつく理由は?
鉄フライパンは「使い方」「油膜」「厚さ(重さ)」などにより食材がくっついてしまうことがあります。フッ素樹脂加工のフライパンとは根本的に異なるものですので注意が必要です。はじめは「使いにくいフライパン」だと感じられるかもしれませんが、慣れる(仕組みが理解できる)に従って「使いやすいフライパン」だと感じらえるようになるはずです。